日商簿記3級 | 公開:2026年5月7日 | 更新日:2026年8月5日

減価償却(定額法)の計算と仕訳
間接法・売却まで完全解説

著者:若葉(関西の大学3回生・日商簿記1級勉強中)

「減価償却費? 減価償却累計額? なにが違うの……」と混乱していませんか?
この記事では計算式の意味から間接法の仕訳、さらに固定資産売却の処理まで順番に解説します。
定額法の計算パターンさえ身につければ、試験で確実に得点できる論点です。

受験生
受験生
減価償却費と減価償却累計額の違いはなんとか理解できたんですけど、この前「決算整理後残高試算表に減価償却累計額2,700円とだけ書いてあって、取得原価を求めなさい」って問題が出て、頭が真っ白になりました……。いつもの「取得原価→減価償却費」の順番と逆で、何から手をつけていいか分からなくて。
若葉
若葉(簿記1級勉強中)
それ、まさに簿記研究部の後輩からも同じ相談を受けたばかりです(笑)。実はこれ、公式を丸暗記していると詰みやすいパターンなんです。普段は「取得原価→年間の減価償却費→累計額」という順番で計算しますが、この問題はその矢印を逆にたどるだけ。「累計額を経過年数で割って1年分を出す→そこから取得原価を逆算する」という2段階に分ければ、怖くありません。この記事の後半(決算整理後残高試算表から逆算するセクション)で、実際にその手順を図解しながら一緒に解いていきますね。
【出題範囲の改定情報】2026年度は変更なし・2027年度から定率法が3級の範囲に追加
2026年度の出題範囲は変更ありません。ただし2027年度から、この記事で扱う定額法に加えて「定率法」が新たに3級の試験範囲に追加されることが日本商工会議所から公式に発表されています(現在は2級の範囲)。2026年度内に受験予定の方は、この記事の定額法の内容のまま学習を進めて問題ありません。

減価償却とは? まず言葉の意味から

減価償却のタイムライン:毎年の費用計上と帳簿価額の変化、B/S上の間接控除法表示
図:取得原価1,000,000円、残存価額100,000円の資産を定額法で5年間、毎年180,000円ずつ費用計上する流れ

たとえば100万円のトラックを買ったとします。このトラックは5年後にはボロボロになって10万円の価値しか残りません。

「じゃあ、価値が減った分(90万円)をどう記録するの?」という疑問に答えるのが減価償却です。毎年少しずつ費用として計上することで、固定資産の価値の目減りを帳簿に反映させます。

まず押さえる3つの用語

取得原価
固定資産を買ったときの値段。購入代金+付随費用(送料など)も含む。
耐用年数
その資産を何年使えるか。問題文に必ず書いてある。
残存価額
耐用年数が終わったあとに残る価値。「取得原価の10%」や「0円」などと指定される。
減価償却費
1年分の目減り額。費用勘定なので損益計算書に載る。

なぜ減価償却が必要なのか(費用配分の原則)

「500,000円のトラックを買った年に全額費用計上すれば簡単では?」と思うかもしれません。でも、それでは財務諸表が正確になりません。

❌ 一括計上(NG)

購入年度に500,000円全額を費用計上

購入年:利益が激減
翌年以降:利益が不当に膨らむ

→ 毎期の業績比較ができない

✅ 毎年分割計上(正解)

使用期間(5年)にわたり毎年100,000円を費用計上(残存価額0の場合)

毎期の費用と収益が対応
正確な利益計算ができる

→ 費用配分の原則

費用配分の原則

固定資産の取得コストは、その資産を使用する期間(耐用年数)にわたって分割して費用化する。

定額法の計算式

📐 定額法 計算式
減価償却費 = 取得原価 残存価額 ÷ 耐用年数

毎年同じ金額を費用として計上するのが「定額法」。簿記3級はこれだけ覚えればOK。

残存価額が「0円」のパターンも多い!
問題文に「残存価額は取得原価の10%」と書いてあれば引き算してから割る。「残存価額ゼロ」なら取得原価そのままを耐用年数で割るだけ。問題文をよく読もう。

例題で確認しよう

パターン①:基本の減価償却(間接法)

例題

¥1,000,000で購入した備品について定額法により減価償却を行う。残存価額は取得原価の10%、耐用年数は5年とする。間接法で記帳している。

▶ まず計算
📐 計算手順
1,000,000 1,000,000×10% ÷ 5年 = 180,000
▶ 解答
借 方
減価償却費 180,000
貸 方
減価償却累計額 180,000
「間接法」とは?
直接「備品」の金額を減らすのではなく、減価償却累計額という別の勘定を使う方法。備品の帳簿価額は「備品 − 減価償却累計額」で計算できる。試験では間接法が圧倒的に多く出題される。

B/S上の表示と帳簿価額の変化

間接法では減価償却累計額を別勘定で管理するため、B/S(貸借対照表)では次のように表示されます。

📋 B/S上の固定資産の表示(例:建物 取得原価3,000 / 耐用年数3年 / 残存価額0)
期末 建物(取得原価) 減価償却累計額 帳簿価額
1年目 3,000 △1,000 2,000
2年目 3,000 △2,000 1,000
3年目 3,000 △3,000 0

帳簿価額 = 取得原価 − 減価償却累計額。取得原価は変わらず、累計額が毎年増える。

直接法 vs 間接法:何が違うか
直接法:建物の残高を直接減らす → 取得原価がB/Sから見えなくなる
間接法★:「建物3,000 △累計額2,000」のように対照表示 → 取得原価と累計額の両方がわかる
試験では間接法が標準。B/Sを見た人が「いくらで買って今いくら価値が残っているか」を把握できる。

決算整理後残高試算表から逆算する

ここまでは「取得原価→年間の減価償却費→減価償却累計額」という順算でした。しかし精算表・決算整理の問題では、決算整理後残高試算表に記載された減価償却累計額から、逆に取得原価や経過年数を求めるタイプの出題があり、多くの受験生がここで手が止まります。考え方の向きを逆にするだけなので、矢印を逆にたどるイメージで整理しましょう。

📐 順算と逆算の関係

順算:取得原価 → 年間の減価償却費 → 減価償却累計額

逆算:減価償却累計額 ÷ 経過年数 → 年間の減価償却費 → 取得原価

例題

決算整理後残高試算表に「減価償却累計額 ¥2,700」と記載されている。この備品は定額法(残存価額は取得原価の10%、耐用年数5年)で減価償却しており、取得から当期末まで3年が経過している。この備品の取得原価はいくらか。

▶ 逆算の手順
📐 STEP1:年間の減価償却費を求める
2,700 ÷ 3年 = 900

累計額は「毎年の償却費 × 経過年数」の合計。定額法なら毎年同じ金額なので、経過年数で割れば1年分が出てくる。

📐 STEP2:年間の減価償却費の式から取得原価を逆算する

年間の減価償却費の公式:(取得原価 − 残存価額)÷ 耐用年数 = 年間の減価償却費

残存価額は「取得原価の10%」なので、(取得原価 × 0.9)÷ 5年 = 900 という式が成り立つ。

900 × 5年 ÷ 0.9 = 5,000
逆算問題を解くコツ:いきなり式を1本で立てようとせず、「累計額 → 1年分の償却費 → 取得原価」の2段階に分けるのがポイントです。1年分の償却費さえ出せれば、あとは普段の公式を逆向きに使うだけです。焦らず順番に図をたどりましょう。

固定資産を売却したときの仕訳

売却の仕訳は一度に書こうとすると混乱します。4ステップで順番に書くのがコツです。

例題

5年前に取得した車両(取得原価¥900、減価償却累計額¥600、当期減価償却費¥100)を¥300で売却した。売却代金は翌月末受け取る。

▶ 4ステップで解く
1
当期分の減価償却費を計上する

期首から売却日までの分を先に費用計上。

2
売却代金の受け取り方を書く

翌月末受け取り → 現金ではなく「未収入金」。即日受け取りなら「現金」。

3
車両と累計額をゼロにする

売却したので「車両」を貸方へ、「減価償却累計額」を借方へ。

4
差額で売却損益を確定

左右のバランスを見て、借方が足りなければ「固定資産売却損(借方)」、貸方が足りなければ「固定資産売却益(貸方)」。

▶ 解答
借 方
減価償却累計額600
減価償却費100
未収入金300
貸 方
車両900
固定資産売却益100
売却益・売却損の見分け方
帳簿価額(取得原価 − 累計額 − 当期償却費)= 900 − 600 − 100 = 200
売却額300 > 帳簿価額200 → 差額100は固定資産売却益(貸方)
売却額が帳簿価額より低ければ固定資産売却損(借方)になる。
「未収入金」と「売掛金」の違いに注意!
売掛金は商品を売ったときに使う。固定資産の売却代金は営業外取引なので「未収入金」を使う。同じ「後で受け取るお金」でも勘定科目が違う。

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簿記の実力は、問題を1つ解くたびに確実に積み上がっていきます。
例題を解いたら、取得原価・残存価額・耐用年数の3つを自分で書き出し、式と仕訳の金額が一致するか確認してください。学習時間の記録にはStudy Questも使えます。

📋 まとめ:減価償却(定額法)パターン一覧

なぜ毎年分割するか 費用配分の原則:使用期間に費用を対応させる
定額法の計算式 (取得原価 − 残存価額)÷ 耐用年数
B/S表示(間接法) 建物3,000 / 減価償却累計額 △2,000 / 帳簿価額1,000
間接法の仕訳(毎年) 減価償却費 / 減価償却累計額
固定資産売却(代金即日) 現金 を使う
固定資産売却(代金後払い) 未収入金 を使う(売掛金NG)
売却額 > 帳簿価額 固定資産売却益(貸方)
売却額 < 帳簿価額 固定資産売却損(借方)

よくある質問

減価償却費の計算式は何ですか?

定額法の場合「(取得原価-残存価額)÷耐用年数」で計算します。日商簿記3級では残存価額ゼロのケースが多く、「取得原価÷耐用年数」で計算することもあります。

直接法と間接法の違いは何ですか?

直接法は固定資産の帳簿価額から直接減額する方法です。間接法は「減価償却累計額」という勘定を使って累計額を別建てにする方法です。3級では両方出題されます。

減価償却はなぜ必要なのですか?

固定資産は複数年にわたって使用するため、使用期間に応じて少しずつ費用化(配分)します。これにより毎期の費用と収益を適切に対応させ(費用収益対応の原則)、正確な損益計算が可能になります。