日商簿記3級 | 公開:2026年5月7日

給料の仕訳
源泉所得税・社会保険料の預り金を図解で完全解説

著者:大谷 一輝(大阪経済大学3回生・日商簿記1級勉強中)

給料の仕訳でポイントになるのは、「総支給額(額面)で仕訳する」という点です。会社は従業員の代わりに源泉所得税・社会保険料を一時的に預かり、後日まとめて国や健康保険組合に納付します。

給料支払いの全体像

給料支払いの全体像 仕訳図解
▲ 上:総支給額の内訳(手取り+控除) 中:借方・貸方の仕訳 下:後日の預り金納付仕訳

図解の上段を見てください。従業員の手元に届く「手取り額(255,000円)」は総支給額(300,000円)から源泉所得税と社会保険料を差し引いた金額です。簿記では費用(給料)は控除前の総支給額300,000円で計上し、控除した15,000円と30,000円は「預り金」として貸方に記録します。後日、会社がまとめて税務署・社会保険事務所へ納付するときに預り金を消します。

総支給額(額面) ¥300,000
(控除)源泉所得税 − ¥15,000
(控除)社会保険料(従業員負担) − ¥30,000
手取り額(実際に振り込む金額) ¥255,000

控除分は「預り金」として会社が一旦立て替え、後日まとめて納付します。

① 給料を支払ったときの仕訳

例題

給料の総支給額 ¥300,000 のうち、源泉所得税 ¥15,000・社会保険料(従業員負担)¥30,000 を控除し、差引手取り ¥255,000 を当座預金から振り込んだ。

仕訳
給料300,000預り金(源泉所得税)15,000
預り金(社会保険料)30,000
当座預金255,000
最重要ポイント

借方は必ず「給料 ¥300,000」(総支給額)。手取り額の ¥255,000 ではない!

正式な勘定科目名について:
試験では「預り金(源泉所得税)」を「所得税預り金」、「預り金(社会保険料)」を「社会保険料預り金」と表記する場合があります。どちらも同じ意味ですが、問題文の指示に合わせて使い分けてください。

② 預り金を納付したときの仕訳

預かった税金・社会保険料は、後日まとめて国や健康保険組合に納付します。

源泉所得税を税務署に納付したとき
預り金(源泉所得税)15,000当座預金15,000
社会保険料を健康保険組合等に納付したとき
預り金(社会保険料)30,000当座預金30,000
「預り金」は負債!
会社が従業員の代わりに一時的に持っているお金なので、いつか返す(納付する)義務がある負債です。給料支払い時に発生し、納付時に消えます。

③ 社会保険料の会社負担分

社会保険料は従業員だけでなく、会社も同額を負担します(労使折半)。会社負担分は「法定福利費」(費用)で処理します。

例題

社会保険料(従業員負担)¥30,000 と、会社負担分 ¥30,000 を合わせて当座預金から納付した。なお、従業員負担分はすでに預り金として処理済み。

納付時の仕訳
預り金(社会保険料)30,000当座預金60,000
法定福利費30,000
従業員負担分と会社負担分を混同しない!
従業員負担分:給料から天引き→「預り金」で処理
会社負担分:会社が別途払う→「法定福利費」(費用)で処理

④ 従業員立替金(代わりに支払ったとき)

従業員が本来負担すべき生命保険料などを、会社が一時的に立て替えることがあります。この場合は「従業員立替金(資産)」で記録し、後日の給料支給時に差し引いて精算します。

例題(立替時)

従業員の生命保険料 ¥25,000 を会社が現金で立て替えた。

仕訳(立替時)
従業員立替金25,000現金25,000
例題(給料支給時に控除)

給料 ¥340,000 を支給する際、立替額 ¥25,000 を控除し、残額 ¥315,000 を普通預金から振り込んだ。

仕訳(給料支給・立替精算)
給料340,000従業員立替金25,000
普通預金315,000
「従業員立替金」vs「立替金」
相手が従業員の場合は「従業員立替金」、取引先など一般的な相手の場合は「立替金」を使います。どちらも資産(後で回収できる権利)です。

⑤ なぜ給料費用は総支給額で計上するのか

手取り額(差引支給額)ではなく、総支給額で給料を費用計上するのは「費用の総額主義」という会計原則によります。

もし手取り額で計上したら?(NG例)
総支給 ¥350,000・所得税 ¥25,000・社会保険料 ¥17,500・手取り ¥307,500 の場合
❌ (借)給料 307,500 /(貸)普通預金 307,500
正しい処理(費用の総額主義)
✅ (借)給料 350,000 /(貸)所得税預り金 25,000
                       (貸)社会保険料預り金 17,500
                       (貸)普通預金 307,500
→「給料費用は総額」「天引き分は預り金(負債)」として全金額が帳簿に残る。

⑥ 総合例題:所得税+社会保険料をまとめて処理

実務では所得税と社会保険料を同時に天引きします。1つの仕訳で処理できるよう練習しましょう。

例題

給料総額 ¥350,000 のうち、所得税 ¥25,000・社会保険料(従業員負担)¥17,500 を天引きし、手取り ¥307,500 を普通預金から振り込んだ。

給料支払時(3つを同時処理)
給料350,000所得税預り金25,000
社会保険料預り金17,500
普通預金307,500
翌月①:所得税を税務署に納付
所得税預り金25,000現金25,000
翌月②:社会保険料を年金事務所に納付(従業員分+会社負担分の合計)
社会保険料預り金17,500現金35,000
法定福利費17,500
納付先が2か所あることに注意!
所得税→税務署、社会保険料→年金事務所。社保は「従業員分+会社負担分」の合計(35,000円)をまとめて納付します。

⑦ 取引先への立替金・預り金

給料以外の場面でも「立替金」「預り金」は出てきます。相手が従業員でなく取引先でも考え方は同じです。

例題①:取引先の運賃を立替え

取引先B社の運賃 ¥2,000 を現金で立替払いした。

立替時
立替金2,000現金2,000
例題②:取引先の売掛金を代わりに受け取り

取引先D社の売掛金 ¥50,000 を代わりに現金で受け取った。

受取時(預り金として記録)
現金50,000預り金50,000
D社に返金したとき
預り金50,000当座預金50,000
立替金 vs 従業員立替金の使い分け:
相手が従業員→「従業員立替金」、相手が取引先など→「立替金」。どちらも資産(後で回収できる権利)である点は同じです。

⑧ よくある間違い3パターン

❌ 間違い①:給料を手取り額で計上してしまう
❌ (借)給料 307,500 /(貸)普通預金 307,500
✅ (借)給料 350,000 /(貸)所得税預り金 25,000 / 社保料預り金 17,500 / 普通預金 307,500

❌ 間違い②:従業員の生命保険料を会社の「保険料」費用として計上してしまう
❌ (借)保険料 /(貸)現金
✅ 従業員のための立替は「従業員立替金(資産)」→後で給料から控除して回収する

❌ 間違い③:取引先の売掛金を代わりに受け取ったとき「売掛金」で処理してしまう
❌ (借)売掛金 /(貸)現金
✅ 他社のお金を預かっているので「預り金(負債)」→後でその会社に返す

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📋 まとめ:給料の仕訳 早見表

給料支払い(借方)給料(総支給額)を借方に記録
給料支払い(貸方)預り金(税金・社保)+当座預金(手取り)
源泉所得税の納付預り金 / 当座預金
社会保険料の納付(全額)預り金+法定福利費 / 当座預金
預り金の性質負債(後で納付する義務)
法定福利費の性質費用(会社負担の社会保険料)
従業員立替金資産|従業員の保険料等を立替え。給料支給時に控除して精算
費用の総額主義給料費用は手取りでなく総支給額。天引き分は所得税預り金・社会保険料預り金(負債)

よくある質問

給料の仕訳で何が控除されますか?

総支給額から社会保険料(健康保険・厚生年金)・源泉所得税・住民税などを控除した手取り額を現金で支払います。控除分は「社会保険料預り金」「所得税預り金」などの負債として計上します。

なぜ手取り額でなく総支給額で費用計上するのですか?

給料は会社にとっての労働の対価なので、実際の手取りではなく総支給額全額を費用計上します。控除は会社が社員に代わって一時的に預かっているだけで、後日税務署・健康保険組合等に納付します。

従業員立替金はどんな場合に使いますか?

従業員が本来自分で支払うべきものを会社が給料から天引きして立て替える場合に「立替金」(資産)として処理します。後日従業員本人に請求・回収することが前提の勘定です。