日商簿記1級 | 公開:2026年7月10日 | 更新日:2026年9月3日
退職給付会計の簡便法と原則法の違いがわからない人へ
「3つの動き」から整理する図解ガイド
著者:若葉(関西の大学3回生・ITパスポート・基本情報技術者学習中/簿記1級は中断中)
この記事でわかること(5秒まとめ)
- 簡便法は期末の帳尻合わせ——期末要支給額から年金資産を引くだけ
- 原則法は毎期の動きを積み上げる——勤務費用・利息費用・期待運用収益の3つを計算する
- 退職給付費用 = 勤務費用+利息費用-期待運用収益という式で求める
- 年金資産の有無で「内部積立型」「外部積立型」の2パターンに分かれる
こんにちは、若葉です!
2級で退職給付引当金を勉強したときは「期末の金額から年金資産を引くだけ」というシンプルな話だったのに、1級で急に「勤務費用」「利息費用」「期待運用収益」という聞き慣れない言葉が3つも出てきて、正直「同じ退職給付のはずなのに、なんでこんなに複雑になるの?」と面食らいました。
でも実は、2級の方法(簡便法)は「結果だけ見る」方法で、1級の方法(原則法)は「毎年の変化を1つずつ追いかける」方法という発想の違いだとわかれば、一気に整理できます。今日はそこから一緒に見ていきましょう!
この記事で整理した内容から、次の学習で確認することを1つ選び、記録に残してみてください。
受験生
退職給付会計、2級では期末の金額を引き算するだけだったのに、1級だと勤務費用・利息費用・期待運用収益とか出てきて、もう何が何だかわかりません……。
若葉(IT資格学習中)
気持ちわかります。でも実は難しくなったわけじゃなくて、「何を見るか」が変わっただけなんです。2級の簡便法は「期末時点の状態」だけを見て引当金を求めます。1級の原則法は「今年1年でどう動いたか」を3つの要素に分けて追いかける。ゴールは同じ「退職給付費用と引当金を求める」ことなので、焦らなくて大丈夫です。
受験生
3つの要素というのが、勤務費用・利息費用・期待運用収益ですか?名前だけだと全然イメージが湧きません。
若葉(IT資格学習中)
勤務費用は「今年働いた分だけ増える退職金の権利」、利息費用は「去年までの分に時間が経った分だけ上乗せされる利息」、期待運用収益は「会社が積み立てているお金を運用して増えると期待される分」です。退職給付費用は、この3つを足し引きして求めます——勤務費用+利息費用-期待運用収益、という式ですね。
❓ 簡便法と原則法——「結果を見るか」「動きを見るか」
簡便法と原則法は、どちらも退職給付引当金・退職給付費用を求める方法ですが、何に注目して計算するかが異なります。
期末の状態だけを見る
簡便法(かんべんほう)
→ 期末要支給額から年金資産を引くだけ
中小企業向けの簡易的な方法。計算はシンプルだが、費用の内訳はわからない。
毎期の動きを追いかける
原則法(げんそくほう)
→ 勤務費用・利息費用・期待運用収益を毎期計算
大企業・上場企業向けの本来の方法。手間はかかるが、費用の内訳が明確になる。
📝 ① 簡便法の計算——2級で学んだ方法のおさらい
前提
期末の退職給付債務(自己都合要支給額)が106,000円、年金資産(外部積立分)がゼロの場合。
退職給付引当金:106,000円(期末要支給額)- 0円(年金資産)=106,000円
簡便法では、勤務費用や利息費用を個別に計算せず、期末時点の要支給額と年金資産の差額をそのまま退職給付引当金とします。
💰 ② 原則法の計算——内部積立型(退職一時金制度のみ)
会社が年金基金を使わず、退職金を自社から直接支払う「内部積立型」の場合です。
出典:企業会計基準委員会「企業会計基準第26号 退職給付に関する会計基準」(2026年9月3日確認)
例題
期首の退職給付債務100,000円、当期の勤務費用5,000円、割引率3%、当期の退職一時金支払高2,000円。
①利息費用:100,000円(期首退職給付債務)×3%=3,000円
②退職給付費用:5,000円(勤務費用)+3,000円(利息費用)=8,000円
| 取引 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 退職給付費用の計上 | 退職給付費用 | 8,000 | 退職給付引当金 | 8,000 |
| 退職一時金の支払 | 退職給付引当金 | 2,000 | 現金預金 | 2,000 |
期末の退職給付引当金は、100,000円(期首)+8,000円(費用)-2,000円(支払)=106,000円になります。
🏦 ③ 原則法の計算——外部積立型(企業年金制度を併用)
会社が外部の年金基金にも積み立てている「外部積立型」では、期待運用収益が加わります。
例題
期首の退職給付債務100,000円、期首の年金資産80,000円、当期の勤務費用6,000円、利息費用2,000円(割引率2%)、期待運用収益2,400円(長期期待運用収益率3%)、退職一時金支払額1,000円、掛金拠出額4,000円。
退職給付費用:6,000円(勤務費用)+2,000円(利息費用)-2,400円(期待運用収益)=5,600円
| 取引 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 退職給付費用の計上 | 退職給付費用 | 5,600 | 退職給付引当金 | 5,600 |
| 退職一時金の支払 | 退職給付引当金 | 1,000 | 現金預金 | 1,000 |
| 掛金の拠出 | 退職給付引当金 | 4,000 | 現金預金 | 4,000 |
期待運用収益がマイナスされる理由:年金資産を運用して増えると期待される分だけ、会社が追加で積み立てる必要が減るからです。運用がうまくいく前提の分だけ、費用が軽くなるとイメージしましょう。
🔍 ④ さらに発展した論点も存在する
実際の年金資産の運用成果が期待運用収益とズレた場合や、退職給付制度の改訂があった場合には、「数理計算上の差異」「過去勤務費用」という差異を一定期間かけて費用処理する仕組みもあります。ただし、これは1級の中でもさらに発展した内容なので、まずは今回の3要素(勤務費用・利息費用・期待運用収益)をしっかり押さえることを優先しましょう。
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📋 まとめ:簡便法 vs 原則法 早見表
計算の視点簡便法=期末の状態/原則法=毎期の動き
退職給付費用原則法=勤務費用+利息費用-期待運用収益
年金資産の扱い内部積立型=なし/外部積立型=期待運用収益を計算
発展論点数理計算上の差異・過去勤務費用(さらに応用)
出題範囲簡便法=2級まで/原則法=1級のみ