労務費は、製品を作るために働いた人にかかる原価です。材料費に比べるとイメージしにくいですが、ポイントは「作業時間を製品に直接ひもづけられるか」です。直接労務費と間接労務費の区別を押さえれば、工業簿記の流れがかなり見えやすくなります。
この練習問題では、直接工が8時間働き、製品Aの加工に5時間、工場の清掃に1時間、手待ち・点検に2時間を使ったとします。賃率は1時間1,500円です。
| 作業 | 分類 | 計算 |
|---|---|---|
| 製品Aの加工 5時間 | 直接労務費 | 5時間 × 1,500円 = 7,500円 |
| 清掃・手待ち・点検 3時間 | 間接労務費 | 3時間 × 1,500円 = 4,500円 |
| 合計 8時間 | 賃金総額 | 8時間 × 1,500円 = 12,000円 |
直接労務費は仕掛品に直賦課、間接労務費は製造間接費を通じて配賦。賃金消費額は「支払高−月初未払+月末未払」で計算します。
労務費とは、製品を作るために発生した人件費です。工場で作業する人への賃金や給料が中心になります。
商業簿記では人件費を「給料」などの費用として処理しますが、工業簿記では製品を作るための人件費を製造原価として扱います。
給料は「支払った月」と「働いた月」がズレることがあるため、当月に発生した労務費(賃金消費額)は、支払高をそのまま使わず、未払分を調整して求めます。
たとえば当月の賃金支払高が500,000円、前月末の未払高が40,000円、当月末の未払高が60,000円だった場合、当月の賃金消費額は次のように計算します。
前月末の未払高は「前月分だが当月に支払った金額」なので差し引き、当月末の未払高は「当月分だがまだ支払っていない金額」なので足し戻します。
| 分類 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 直接労務費 | どの製品のために作業したか直接わかる労務費 | 特定の製品を加工した直接工の賃金 |
| 間接労務費 | どの製品のためか直接わけにくい労務費 | 監督者の賃金、補助作業、手待時間、間接工の賃金 |
材料費と同じで、判断軸は「特定の製品に直接ひもづくか」です。直接作業時間に対応する賃金は直接労務費、それ以外は間接労務費に入ります。
直接労務費は、作業時間と賃率で計算します。
たとえば直接作業時間が80時間、賃率が1時間あたり1,500円なら、直接労務費は120,000円です。
直接労務費は、製品の原価へ直接入るので「仕掛品」に振り替えます。
間接労務費は、いったん製造間接費に集めてから製品へ配賦します。
工業簿記では、作業者を直接工と間接工に分けて考えることがあります。
| 区分 | 意味 |
|---|---|
| 直接工 | 製品の加工に直接関わる作業者 |
| 間接工 | 修繕・運搬・補助作業など、製品加工を支える作業者 |
ただし、直接工の賃金がすべて直接労務費になるわけではありません。直接工でも、手待時間や間接作業時間は間接労務費になります。
工業簿記では、予定賃率を使って労務費を計算することがあります。予定賃率とは、あらかじめ決めた1時間あたりの賃金単価です。
たとえば予定賃率が1時間あたり1,500円、実際賃率が1,600円、実際作業時間が80時間だった場合、賃率差異は次のように計算します。
計算結果がマイナスになるのは「実際の方が予定より高くついた」状態で、これを不利差異といいます。逆にプラスになれば、予定より安く済んだ有利差異です。
差異分析は、予定で計算した金額と実際の金額のズレを調整するためのものです。最初は「予定を使うとズレが出るから、あとで差異を計算する」と理解できれば十分です。
私がこの論点で最初に見るのは、従業員の肩書きではなく、作業時間がどの製品に追跡できるかです。直接作業なら仕掛品、補助・監督作業なら製造間接費という行き先を先に決めると、賃金消費額や賃率差異の計算が後からつながります。
次の一手:作業時間の数字を1つ置き、直接労務費と間接労務費を計算する。 費用の論点へ進む