電子帳簿保存法をわかりやすく解説|簿記を勉強している人が知っておくべき実務対応

更新日:2026年7月13日|著者:若葉(関西の大学3回生・日商簿記1級勉強中)

若葉 若葉 より

簿記の勉強で「証憑(しょうひょう)」や「帳簿書類の保存」って言葉、教科書の中の話だと思っていませんか?私もそうでした。でも電子帳簿保存法を調べてみて驚いたのが、「もう教科書の話じゃなくて、今すぐ実務で対応を迫られる話」になっていたことです。

特に2024年1月から、請求書や領収書を電子データでやり取りしたら紙に印刷するだけでは保存扱いにならない、というルールが完全義務化されています。簿記の勉強をしている人・個人事業主の人向けに、国税庁や専門家の一次情報をもとに整理しました。

電子帳簿保存法は、大きく分けて「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」の3つの制度からなります。この中で唯一義務化されているのが「電子取引データ保存」で、2024年1月からすでに完全義務化済みです。個人事業主も、事業として電子取引を行っていれば対象になります。

先に結論:怖がりすぎる必要はありません。基準期間の売上高が5,000万円以下なら検索要件は不要になり、対応できない相当の理由があれば猶予措置もあります。まずは「メールやWebで受け取った請求書・領収書は、印刷ではなくデータのまま保存する」ことだけ押さえれば土台は完成です。
受験生
受験生
電子帳簿保存法って名前は聞いたことあるんですけど、簿記の勉強とは関係ないですよね?経理の実務だけの話かと思ってました。
若葉
若葉(簿記1級勉強中)
私も最初はそう思ってたんですけど、簿記で習う「帳簿書類の保存」や「証憑の管理」って、まさにこの法律が定めているルールそのものなんです。試験で「なぜ保存するのか」を暗記するだけだった知識が、「今どう保存すればいいのか」という実務の話に直結してるって気づいて、正直ちょっと感動しました(笑)。
受験生
受験生
じゃあ何をどう保存すればいいのか、整理して教えてください!
若葉
若葉(簿記1級勉強中)
まずは制度の3区分と、その中で唯一義務化されている「電子取引データ保存」から見ていきましょう!

電子帳簿保存法の3つの区分

電子帳簿保存法は、対象となるデータの種類によって3つの制度に分かれています。

1
電子帳簿等保存

会計ソフトなどで最初から電子的に作成した帳簿・書類を、データのまま保存する制度。任意です。

2
スキャナ保存

紙で受け取った請求書・領収書をスキャナやスマホで読み取り、画像データとして保存する制度。こちらも任意です。

3
電子取引データ保存

メール添付やWebサイトからのダウンロードなど、最初から電子データでやり取りした請求書・領収書等を、データのまま保存する制度。これだけが義務です。

ここが最重要:「電子帳簿保存法=全部義務化された」という誤解が多いですが、義務なのは3区分のうち電子取引データ保存だけです。紙の請求書をわざわざスキャンして電子化する義務はありません。

2024年1月から完全義務化された「電子取引データ保存」

2024年1月1日から、電子取引データ保存が完全義務化されています。以前は「電子データで受け取っても、紙に印刷して保存すればOK」という猶予(宥恕措置)がありましたが、この宥恕措置は2023年12月31日で廃止されました。

つまり、取引先からPDFの請求書がメールで届いた、ネットショップの領収書をWebページからダウンロードした、といったケースでは、原則として紙に印刷するのではなくデータのまま保存する必要があります。個人事業主も、事業のための電子取引であれば対象です。

受け取り方2023年まで2024年1月〜
メール添付のPDF請求書印刷保存も可原則データ保存が必須
Webからダウンロードした領収書印刷保存も可原則データ保存が必須
紙で受け取った請求書紙のまま保存でOK変更なし(紙のままでOK)

検索要件が不要になるケース(売上高5,000万円以下)

電子取引データ保存には、本来「日付・金額・取引先」で検索できる状態にしておく検索要件があります。ただし、令和5年度税制改正でこの要件が緩和されました。

検索要件が不要になる基準:基準期間(個人事業主なら前々年)の売上高が5,000万円以下で、税務調査等の際にデータのダウンロードの求めに応じられる場合、検索要件は不要です(令和6年1月1日以降。従来は1,000万円以下が基準でした)。

資格試験に出てくる「小規模事業者への配慮」という発想がそのまま制度化された形で、多くの個人事業主・小規模法人はこの基準に当てはまるため、検索用のフォルダ管理まで神経質に作り込まなくても対応できるケースが多いです。

猶予措置とは(旧・宥恕措置との違い)

2023年末で廃止された「宥恕措置」に代わって、2024年1月1日から新しく「猶予措置」が設けられています。名前が似ていますが、性質が異なる点に注意が必要です。

1
宥恕措置(〜2023年12月31日・廃止済み)

準備が間に合わない事業者への一律の経過措置。今はもう使えません。

2
猶予措置(2024年1月1日〜)

電子データ保存の要件を満たせないことについて「相当の理由」があり、かつ税務調査等でダウンロードの求め・書面の提示の求めに応じられる場合に認められる措置。誰でも自動的に使えるわけではありません。

注意:猶予措置はあくまで「相当の理由」がある場合の措置であり、「対応するのが面倒だから」は理由になりません。本記事執筆時点で猶予措置の終了時期は明確に定められていませんが、恒久的な制度ではない前提で考えておくのが安全です。

スキャナ保存の実務:2022年改正でここまで楽になった

紙で受け取った請求書・領収書を電子化する「スキャナ保存」は義務ではありませんが、ペーパーレス化のために使いたい人も多いはずです。実はこの制度、2022年(令和4年)の改正で要件が大きく緩和されています。

1
タイムスタンプが不要になるケースが増えた

訂正・削除の履歴が残るクラウド系の会計ソフト等を使っていて、入力期間内に記録したことが確認できる場合、タイムスタンプの付与自体が不要になりました。付与が必要な場合も、期限は最長約2か月と概ね7営業日以内に緩和されています。

2
受領者の自署が不要に

以前はスキャナで読み取る書類に受け取った人のサインが必要でしたが、この要件は廃止されました。

3
「適正事務処理要件」が廃止

複数人でのチェック体制や定期的な検査といった社内ルールの整備を求める要件がなくなり、中小企業・個人事業主でも導入しやすくなりました。

つまり:「スキャナ保存は手間がかかりそう」というイメージは2021年以前の話です。今は会計ソフトのアプリでレシートを撮影するだけで要件を満たせるケースがほとんどです。

電子帳簿保存法に違反したら本当に青色申告取消になるのか

調べていると「違反すると青色申告が取り消される」という記述を見て不安になる人がいますが、正確には「違反=即・取消」ではありません。

電子取引データ保存の要件を満たせていなかった場合でも、国税庁の事務運営指針に基づいて個別に判断される仕組みです。他の書類等から取引の実在が確認でき、それ以外に特段の問題がなければ、直ちに青色申告の承認が取り消されるわけではありません。

ただし実害はゼロではありません:電子取引データの改ざん等が見つかった場合は重加算税が10%加重されます。また会社法上、帳簿の保存義務違反には100万円以下の過料の規定もあります。「取消はされにくい」からといって対応しなくていい理由にはなりません。

簿記の勉強内容と、この法律のつながり

簿記を勉強していると「証憑」「帳簿書類」「7年間の保存義務」といった言葉が出てきますが、これはまさに電子帳簿保存法・法人税法・所得税法が定めるルールの実務側の姿です。

関連記事:個人事業主の税金の基本からおさらいしたい人は税金用語まるわかりガイド、インボイス制度の最新情報はインボイス2割特例・3割特例の記事も参考にしてください。

まとめ

⚔ 制度を正確に追いかける力は、資格試験にもそのまま活きる

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若葉 若葉 より

正直に言うと、私もこの記事を書くまで「電子帳簿保存法=面倒な話」というイメージしかありませんでした。でも調べてみると、簿記で習っている「なぜ証拠を残すのか」「なぜ正確な帳簿が必要なのか」という考え方が、そのまま今の実務ルールになっているだけだと分かって、勉強がぐっと現実味を帯びました。

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なお、この記事の情報は執筆時点(2026年7月)のものです。制度は今後も改正される可能性があるため、実際に対応する際は国税庁の公式サイトで最新情報を必ず確認してください。

よくある質問

電子帳簿保存法は個人事業主も対象ですか?
はい。事業として電子取引を行っていれば、規模にかかわらず電子取引データ保存の対象になります。ただし基準期間の売上高が5,000万円以下であれば検索要件は不要になるなど、小規模事業者への配慮があります。
紙で受け取った請求書もデータ化しないといけませんか?
いいえ。紙で受け取った書類を電子化するかどうかは任意(スキャナ保存制度)です。義務化されているのは、最初から電子データでやり取りした取引情報(電子取引データ保存)のみです。
検索要件はどんな場合に不要になりますか?
基準期間の売上高が5,000万円以下(令和6年1月1日以降。従来は1,000万円以下)で、税務調査等の際にデータのダウンロードの求めに応じられる場合、検索要件は不要です。
対応が間に合わない場合はどうなりますか?
2023年末で廃止された宥恕措置に代わり、2024年1月から「相当の理由」がある場合の猶予措置が設けられています。ただし自動的に適用されるものではなく、ダウンロードの求め等に応じられることが前提です。
スキャナ保存にタイムスタンプは必ず必要ですか?
いいえ。訂正・削除の履歴が残るクラウド系の会計ソフト等を使い、入力期間内に記録したことが確認できる場合は、タイムスタンプの付与自体が不要です。2022年の改正で要件が緩和されました。
電子帳簿保存法に違反したら青色申告はすぐ取り消されますか?
いいえ、即・取消ではありません。国税庁の事務運営指針に基づき個別に判断され、他の書類等で取引の実在が確認できれば直ちに取り消されるわけではありません。ただし重加算税10%加重や会社法上の過料100万円以下の規定はあります。